実戦派を育てる図解不定期連載 第3回

「フロッピーディスクの調子が悪いモロ」

中村隆生


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■はじめに

 68のフロッピーディスクドライブ(以下、単に「FDD」と書きます)はオー

トイジェクトのインテリジェントタイプです。X680x0 が出た当初は、他にはオ

ートイジェクトドライブと言えば Mac の 3.5 インチドライブだけで、かなり画

期的なことだったのですが、逆に専用ドライブだったがゆえに、それが仇となっ

て「故障してもなかなか替えがきかない」という状況になっています。

 そこで今回は、リクエストのあった「フロッピードライブのメンテナンス」を

やります。



■ドライブをバラそう  3.5 インチドライブが装着されたマシン(Compact シリーズ)は、まだ経年が 浅いと思われますので、今回は5インチに的を絞って解説します。なお、元祖と PRO は、写真の通りではないと思われますので注意して下さい。元祖と PRO の ドライブは TEAC 製、それ以外の機種のドライブはキヤノン電子製と、メーカー が違うのです。機能はほとんど同じですが。  さて、X680x0 の可動部と言えば FDD(とキーボード・マウス)です。シーク 時に「ぐぎぎぎ」というような音がしたり、フロッピーのローディングやイジェ クトに失敗するという現象は、機構の潤滑油が切れていることがほとんどです。 もちろん、そうでない故障もありますので、これで直るとは保証できません。  それでは実際の手順ですが、まず、グリスを用意して下さい。DIY 店とかで売 ってるやつでいいです。私は東急ハンズで買ってきました。500 円ぐらいのでい いです。 ◎グリス  FDD を取り出すには、側板を開ける必要がありますが、それは前号でやったの で省略します。ここでは、もう側板が取れているということにして、FDD を取り 外すためのビス位置を示します。  写真は XVI で、HDD 固定用のプレートが付いています。この部分は各機種で 異なりますので適当に外して下さい。ドライブの下側は2個のねじで止まってい ますが、うち1個はフラットケーブルの下に隠れています。 ◎横から見たビス位置  次に、FDD に接続されているケーブルを確認します。FDD 用の信号ケーブル (表に見えている、45度に折り曲げられたフラットケーブル)は、背面基板 (外部 FDD 端子などが付いている、左下に見える基板)から FDD を経由して、 底面基板に接続されていますが、実用上、底面基板のところは外さなくてもいい です。これらのコネクタは、両側が爪で固定されていますが、左右に開くように するとテコの原理で外れます。その他のケーブルは引っこ抜くだけで OK です。 なお、背面基板と FDD との接続を外す時は、別の背面基板のケーブル(写真で いうと、カラフルなフラットケーブルです)を外した方が楽です。文章で説明す ると冗長になりますが、実際やってみれば意外に簡単なものです。 ◎ケーブルの位置  この他に、FDD には、フロントパネルのアクセスランプ・イジェクトボタンへ の配線がつながっています。写真のコネクタの他に、反対側にも似たような配線 がありますから、それも引っこ抜いて下さい。配線は0ドライブ用・1ドライブ 用に別れていますから、後で組み立てを間違えると、0ドライブをアクセスして いるのに1ドライブ側のアクセスランプが光る、というようなことになります。 組み立てる時のために、「明るい色の配線が手前」と覚えておくと良いでしょう。 ただ、機種やロットによって、配線の色が違うと言うことはあり得ます。 ◎フロントパネルへの配線  以上で、FDD が外れるようになるはずです。 ◎FDD を外したところ  外した FDD は、ドライブ2つがシールドにねじ止めされてひとつのユニット となっています。片側4箇所、合計8箇所でねじ止めされていますから、全部外 して下さい。写真では、片側の位置を示していますが、現物を見ればすぐに分か る通り、反対側にもまったく同じようにねじが付いています。 ◎ねじ位置  ドライブを外したら、1台ずつほこりを払ってきれいにします。できれば、代 替フロンを使ったスプレー式のブロアーがあると良いです。写真は、満開で愛用 している「ヨンエーブロー」です。写真用品店でも置いてあることがあります。 あと CD-R を焼く前にほこりを飛ばすのにも良いです。 ◎ブロアー  さて、ドライブをよく見るとモーターとギアが見えますが、これはイジェクト のための機構です。イジェクト回りで異常がある人は、ここと、後述しますが裏 側の機構をチェックすると良いでしょう。 ◎イジェクト用の機構(アップ) ◎グリスを足しているところ  次に、FDD の心臓部を見るために、シールドを外します。シールドは4箇所で ねじ止めされています。 ◎シールドのねじ(その1) ◎シールドのねじ(その2)  シールドは、ねじ止めだけでなく、折り曲げ加工でひっかかっているところが ありますから、後ろ側(モーターが付いている側)にずらすようにして外すと良 いです。 ◎シールドが外れたところ  シークの時に「ぐぎぎぎ」という異音がする場合、次の写真の位置にグリスを 足すと直ることが多いです。 ◎グリス注入の例  また、イジェクト機構にもグリスを足しておくと良いかも知れません。 ◎グリス  どの機構がどんな役目をするかは、ぱっと見ただけではなかなか分からないと 思います。そこで、多少乱暴ですが、この状態で0ドライブだけ接続してみると いう手があります。フロッピーがシークするところも興味深いですが、オートロ ーディング・オートイジェクト機構は見ていても楽しいものです。起動ディスク でなく、クリーニングディスクでやってもいいですが、今日び5インチのクリー ニングディスクは入手が難しいでしょうね。  ところで、バラしてしまったあと、どちらが0ドライブでどちらが1ドライブ だったかは分からなくなりがちですが、すぐに判別する方法がありますからご紹 介します。下の写真を見て下さい。 ◎ドライブ番号を見分けるポイント  この部品(ショートジャンパと言います)でドライブ番号を設定します。これ は1ドライブの例ですが、0ドライブの場合は一番左にジャンパピンを挿す設定 になります。同じ設定のものがふたつありますが、これはどちらも常に同じにな るように設定して下さい。たとえば、これを0ドライブにするのであれば、両方 のジャンパとも一番左をショートする、ということになります。  また、ここで設定が変更できるので、0ドライブと1ドライブを入れ替えてし まうというのも有効でしょう。車のタイヤを前後左右で交換するように、ローテ ーションで使う訳です。こうすれば片減りを平均化できます。  組み立てる前に接続して動作確認すると確実です。グリスがいきわたるのに時 間がかかることもありますから、しばらく「馴らし運転」すると良いでしょう。 その後、組み立てを行えば完成です。 ━━━━━━ ■次回の予定  次回は、特に要望がないようなら、バックアップ用電池の替え方を解説します。 (EOF)